「大学入試 ~過去・現在・未来~〈前編〉」
2016/10/23
季節はすっかり秋。
受験生にとっては、勉強にますます力が入ってくる時期です。
中学受験や高校入試に挑む小6生や中3生も、それぞれの立場で焦りや不安を感じ、悩み多きことでしょうが、それにもまして高校3年生は、さらに大きなプレッシャーの中で大学入試にチャレンジします。2倍そこそこの倍率にビビっていた高校入試とは比べものにならないくらい、現在でもやはり人気大学は倍率が高く、狭き門です。
そして、その大学入試、ここ30年ほどの間に大きく様変わりしました。お父さん、お母さんの若かりし頃のそれとは全く別物と言っていいくらいです。かく言うわたしも、日本がバブル真っ盛りの頃、“花の女子大生”で、経済同様、完全に浮かれていた世代です。いたってシンプルだった“あの頃”の大学入試から何が変わったのか、前編では3つのポイントに絞ってお話したいと思います。
① 入試制度
まずは“あの頃”には存在しなかった「AO入試」についてです。
推薦系の入試のひとつで2000年くらいから広まり、現在では大学入学者の10%弱がこの方法で大学に進学します。「AO」とは「アドミッション・オフィス(=入学管理室)」のことです。指定校推薦や公募推薦といった入試では、学校の内申点が出願の基準になることが多いのに対して、AO入試はその基準がないことが多く、内申点が低くても出願できる場合がほとんどです。一見、魅力的な入試方法に思えますが、内申点の基準が設けられていなかったり、学力テストが課されない代わりに、課題レポートをはじめとして、記述式の提出物が多岐にわたります。これらを生徒ひとりで仕上げるのはかなり難しく、サポートが必要になります。
では、2月を中心に行われる大学ごとの学力試験の入試、いわゆる「一般入試」に変化はないかというと、「全学部入試」と称する入試が私立大学を中心に行われるようになりました。これは、1回の受験で複数学部や学科の合否判定をしてくれる入試です。もちろん“あの頃”と同様、学部学科ごとの個別入試もあります。
もう1点指摘したいのが、「センター試験」についてです。
“あの頃”は「共通一次試験」という名称で(1989年まで)、国公立大学を受験する人のためのテストでしたが、現在では、相当数の私立大学がセンター試験の結果で受験できるようになりました。
「全学部入試」も「私大のセンター利用」も受験の機会を飛躍的に多くしたというメリットをもたらしましたが、裏を返せば、入試がそれだけ複雑になったということでもあります。
② 費用
大学の学費や受験料などが“あの頃”と同じだとお考えのご父兄は少ないことでしょう。当然ながら、学費・受験料の類は上がっています。
そして昨今なにかと話題に挙がるのが「奨学金」です。“あの頃”もすでにほとんどの人が高校には進学する時代でした。とはいえ大学進学率は1985年で35%、大企業であっても採用時に「高卒枠」や「短大卒枠」がありました。時代が進み現在では大学進学率が58%(東京都に限ると65%)、短大の多くが姿を消し、大企業では一般職採用の女子でも「大卒」が条件となっているようです。もはや就職のために“奨学金を借りてでも大学に行く”時代となったのです。奨学金については卒業後の返済が滞るなど、いくつか問題点が指摘されていることはご存知でしょう。給付型(返済しなくてよい)奨学金が今後増えていくと考えられますが、大学4年間の学費だけで文系400万円、理系600万円以上がかかるとされている現在、早めにお金について考えることは大切です。
③ 情報
これが30年間で一番の変化かもしれません。
現在では大学側からの情報は、オールカラーの大学のパンフレットや、各大学が力を入れているであろうホームページにあふれかえっています。出願も合格発表もネット上で行われ、受験シーズンになると、毎日志願者数が更新されます。“あの頃”はさしたる情報もなく、限られた数の大学の中から漠然とした憧れで志望校を決めていたものです。ところが今では、“あの頃”よりはるかに大学の数が増えていることもあり、“生徒に選ばれる大学”にならなければ生き残れないとの危機感から、大学側からの積極的な働きかけが見られます。「オープンキャンパス」も“あの頃”にはなかったイベントです。
しかし、あまりの情報量に辟易するのも事実です。確かに受験生にとって知りたい情報も多く有益ですが、さまざまな大学の情報に触れるには時間がかかりますし、すべて網羅するには無理があります。耳障りのよい情報だけに踊らされることがないように客観的に見なくてはなりません。
どうでしょう、大学入試の過去と現在を見てきましたが、ずいぶん変わったものだなぁ…とお思いになりませんか?後編では、近い将来に“またまた大きく変わる”ことになっている大学入試のお話をしたいと思います。